婦人雑誌 「家庭画報」

家庭画報87年9月号 
夫から妻へ、妻から夫へ。
素敵な贈りもの
夫婦の記念日に手紙を添えて



優しくしてくれてありがとう  

 今日、引き出しを整理していましたら隅っこの方から小さな宝石ケースが出てきました。中に何が入っているのか思い出せず蓋を開けました。そうしましたら結婚指輪が二つ、チョコンと並んで入っていたのですよ。ああ、なつかしい。本郷中央教会で取り交わしたあの指輪です。裏にはS47・4・8・M〜Sと刻んであります。小さい方はS〜Mと。一瞬、私は15年前の花嫁姿になりその時の情景が鮮やかに蘇りました。荘厳な祭壇、オルガンの音、立派な牧師さま、参列してくださった人々,,,。今は亡きお義父さまの笑い顔。今日は良人(脚本家.市川森一さん)はそのお義父さまの法事で長崎へ帰っているのですね。大勢の方があらためてお義父さまを偲ばれたことでしょう。結婚後初 めでチャンポンを食べ、べっ甲屋さんでバラの花形のブローチを買って下さいました。「これであなたも長崎の女たい」と言われて胸に飾ってもらった時の嬉しさ・・・。さて、久しぶりに指輪をはめようと思ったら指に入りません。ずっと前に二人とも太って指輪がきつくなったのではずしてしまったのでしたよね。それであなたの指輪をはめてみました。今はこれがわたしにピッタリです。もう15年も経つのですものね。いつも優しく付き合って下さってありがとう。銅婚式の記念にべっ甲の名刺入れをそっとプレゼントします。長崎からのお帰りを待っています。 

柴田 美保子