基本理念


原始的な工具を使って手作業で物を作っていたさなか 
1750年代にはいり イギリスで物を作るための機械が発明されたことで
一気に生産性が上がりました。
第一次産業革命です。
そして大英帝国が力をつけて世界の覇権を握りました。
1870年代 蒸気機関とガソリンを使ったエンジンが発明されたことで
更に生産性が上がりました。
第二次産業革命です。
そして資本主義という考え方が生まれました。
世界の覇権を巡って世界大戦がはじまりました。
効率よく物を作れるようになり便利な時代になった代償として
戦争でたくさんの命が散っていく悲しい時代になりました。
1990年代 インターネットの普及により
情報通信における伝達手段が進化しました。
仕事のあり方が大きく変わりました。
第三次産業革命です。
世界が一つにつながったことで 
国家という垣根を超えて企業が大きく成長しました。
Amazonや楽天 などの実店舗が存在しないのに物が売れて大きなお金が動く
そういうビジネスが生まれました。
第二次産業革命のときのように
国家の覇権のために命をかけて戦争をする
という価値観はなくなりつつあります。
産業革命が起こると社会の構造は大きく変わります。
わたくしが体を壊したことで実店舗を完全に閉店したのは2001年の春でした。
べっ甲屋のなかでいちばん最初に力尽きたのが川口鼈甲店でした。
第三次産業革命の真っ只中でした。
それから15年の歳月が流れました。
インターネットによる第三次産業革命は完全に定着していました。
ヤフーオークションに出品して商品を買って頂く
1990年代には誰も考えていなかったビジネスモデルに挑戦しました。
しかし べっ甲製品の出品にはほとんど入札がない
いわば蚊帳の外
やって駄目だったこととやらなかったこと 結果は同じ
半ば諦めつつ出品いたしました。
そしてオークションのみでの販売が定着しました。
2020年8月1日 22時38分 
わたくしどものオークションサイトでべっ甲のアクセサリーをいくつもご落札していただいている方から
メッセージを頂きました。
「こう言っては申し訳ないですが 
川口鼈甲店が今も長崎にあったのならば
残念ながら私はその存在を知らず
今ほど鼈甲の良さも知らずにいたことでしょう。
ヤフオクで偶然にも商品の紹介を拝見し
最初は品物よりいろいろ書いてある文章が気になり
文章を拝読してから品物の画像を見ると
他とは違うと思い始めました。
それまで鼈甲はペンダント1点しか持っておらず
それでも川口さんが紹介されるものは違う 
鼈甲の質もデザインも。
川口さんは不本意だったかもしれませんが
ヤフオクに出して頂いたおかげで私は出会え、感謝です」
わたくしが長崎で腎臓が壊れるところまで七転八倒した日々は
オークションで認めていただくための布石ではなかったはずなのに・・・という忸怩たる思いがずっとありました。
このメッセージを頂いたことで
流れる水に文字を描くような 
虚しいだけの日々が報われたような気がいたしました。
内閣府のホームページに
「第四次産業革命がはじまっている」という告知があります。
第四次産業革命とはすべての分野で
指数関数的な倍×倍×倍 というスピードで技術が進歩していく
自動運転.空間に画像を表示する仮想世界.
3Dプリンターで人工的に臓器を作り出す など
2030年頃にはそれが定着するのだそうです。
2020年7月27日 NHK総合テレビ 午後7時半から42分間のトークバラエティ番組
「夏だ!てれファミリー コロナ禍のリモート帰省」のなかで報じられましたので
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが
日本でいちばん古い長崎の江崎べっ甲店が閉店しました。
川口鼈甲店 実店舗としての実体はありませんが 
インターネットによる第三次産業革命の波に乗って
こうして皆様に商品をお買い求めいただいています。
こういうかたちではありますが 
暖簾はまだ生きている と仮定いたしますとき 
1881年 創業者川口栄蔵が8歳で坂田べっ甲店へ弟子入りした年を川口鼈甲店の創業の年
1896年 長崎市鍛冶屋町にお店の看板を掲げた年を開店の年
と位置づけることができます。
江戸時代から何代も続いているべっ甲職人を除いて 
お店という形態が発足した日から数えていくとき
わたくしどもは日本でいちばん古い暖簾ということになります。
第四次産業革命は 街のあり方 お店のあり方を大きく変えていきます。
日本の地方都市から百貨店の灯が消えはじめました。
日々進化の手を緩めることのないAmazonの攻勢で
ニューヨ−クの老舗百貨店も苦戦を強いられたり 廃業したリというのが現状です。
わたくしどもの手元には原材料が潤沢にあった頃におつくりした商品がたくさんございます。
しかし  第一次産業革命以前の手仕事による技術が
いつまで皆様に評価していただけるのか 
想像がつきません。
腎臓が壊れてしまったわたくしがいつまで出品に携わることができるのか
これもまた神のみぞ知る領域です。
川口鼈甲店が完全閉店する日は必ず訪れます。
その日 その瞬間まで
高額品もそうでない商品もすべて送料込みで100円スタート 
発送はヤマト運輸のVIP扱い または 定形外郵便
お客様が納得のいくお値段で購入していただくという形態での販売を
続けさせて頂く所存でございます。
2020年(令和2年)811月23日          川口洋正 拝