山本容子さんとの交遊




赤道直下の国では鼈甲の原材料であるタイマイ亀の卵や肉は食用として市場の店頭に並んでいます。 常夏の国々に住む人たちにとってタイマイ亀は大切な食文化のひとつです。そして貝殻細工と同じように食材として使われたあとに残った甲羅に人の手を施すことによって美しい装飾品としていかしていくという技術はタイマイの原産国だけではなく 中国やヨーロッパで古くから伝承されてきたひとつの文化です。しかしながらアメリカ合衆国は「絶滅の危機に瀕している」という一部の生物学者の意見だけを取り上げてワシントン条約会議の席上でタイマイの捕獲及び輸入の全面禁止を提案しジャパンバッシングの道具として標的にされてしまいました。そしてソビエト連邦 の崩壊とともに世界の国々がアメリカに追随するという勢力図ができつつあった1991年(平成3年)の秋、大自然からの贈り物であるタイマイへの感謝と鼈甲細工の灯がこれからも継承されていってほしいという祈りを版画家の山本容子さんにお願いして一枚の画に描いていただきました。そして当店ではこの気持ちをいつまでも大切に 育んでいくため暖簾や包装紙のなかでこの作品をモチーフにしたカメのデザインを使わせていただいています。