内田樹先生へ
初めてメールを差し上げます。
わたくしは現在59歳.子供のいない既婚男性です。
長崎で4代続いたべっ甲店の店主でした。
腎臓を壊したことで傾いていたお店を閉じて
2002年から軽井沢町で療養の傍らほんの少しだけべっ甲に関わって
余生を生きています。

内田先生の存在を知ったのは武田鉄矢さんのラジオ番組がきっかけでした。
ご本を読ませていただいています。
ネットに公開される文章も読ませていただいています。
深く広く遠くまで見えるようになりたい
と想いつつ日々暮らしています。
どうすればよいか悩むとき
先生のご本に書かれていた「下流志向」という言葉が頭をよぎり
楽な方に流れないよう戒めています。

わたくしごとなのですが
自分のお店のホームページの末尾に童話を書きはじめました 。
いのち 文化 芸術 技術 について
べっ甲屋の小倅としてこれまで出会ってきた人達との関わりを
主人公の子供が時間軸を超えて魔法が使える猫と一緒に旅をするという設定です。
10年ぐらい未来のお話です。
そのむかし べっ甲業に携わっていた家族に生まれた子供の視線で書いています。
昨年の秋に 突然 童話の構想が頭に浮かんできたとき
「主人公の名前は たつる 君 」
と感じました。
わたくしの拙い意識の中に内田先生の考え方が深く浸透しているからでしょう。
他の名前を想像しても物語がすすみませんでした。

今年の3月末でYahooのホームページサービスが終了いたしましたので
プロバイダーを新たに契約しました。
それに伴い5年ぶりにホームページをシンプルなものに再構成しました。
そして 第一話だけできている童話を公開させていただきました。
公開してからあらたに加筆修正しています。
数年の時間をかけて10話ほど発表できればと考えています。
内田先生のお名前を勝手にお借りしていますことを
ご連絡することは失礼に当たると躊躇していたのですが
尊敬する方のお名前に対する畏敬の念 畏れ敬う 想いがございますので
非礼を承知でご連絡させていただきました。



川口さま
こんにちは。内田樹です。
メール拝受致しました。
童話の主人公に「たつる」という名前をつけてくださったとのこと。
光栄です。
でも、「たつる」は別に僕がコピーライトもっているわけじゃないので、どなたがどんなふうに使っても、誰かの許可が要るという話ではありません。
じゃんじゃん使ってください。
「たつるは嗜虐的な薄笑いを浮かべながら女の白い胸に包丁を突き立てた」とか、そういうシーンがあっても別に僕が「ひどい」とか言える筋じゃないです。
がんばってください。