第二話 すみれちゃん お医者さんになる
たつる(樹)君の1日は学校からはじまります。
幼馴染のよしなが(吉永)君ととのだ(殿田)君も同じクラスです。
今日のたつる君はどこか落ち着きがありません。なぜかというと先週あった算数のテストの答案が返ってくるからなのです。もちろん授業で先生のおっしゃることはちゃんと聞いたし家でも勉強を頑張ったし答案も上手く書けた気がしています。
「よしなが君は何点だったの」
負けず嫌いのたつる君は早速ライバルの吉永くんに訪ねました。
『僕と同点だ!』
いつもよしなが君にあと少しで勝てないたつる君は頑張った甲斐があったと内心大喜びです。
「とのだ君は?」
「100点だよ」
とのだ君は落ち着いて答えました。
『やっぱり負けた … 』
もしかして今度こそはクラスで一番かもしれないと期待していたたつる君はとのだ君の点数をきいてがっかりしてしまいました。
「やっぱりとのだ君には勝てなかったね」
学校からの帰り道 たつる君とよしなが君がおしゃべりをしています。
「たつる君 僕ね.本当は全部解けたんだよ。でもわざと一問だけ間違えた答を書いたの」
たつる君はよしなが君の思いがけない言葉に驚いて尋ねました。
「どういうこと?」
「だって 全部正解できるテスト問題なんてワクワクしないじゃないか。学校で先生から習ったことだけがテストに出て それが出来たら一番だなんてそんな小さな一番だったら僕はいらない。見たこともない問題をああでもないこうでもないって考えることのほうがよっぽど意味があるよ。僕は人から教わらなくても自分で考えてできる人間になりたいんだ。その気持ちを先生にわかってもらいたいなんてまったく思わないけど最後の一問ぐらいあんな簡単な問題でなくて力を試す問題を出して欲しかった。だからわざと間違えた。僕の考えていることに気づくかな…? って思ってね」
いつものやんちゃなよしなが君はどこにいったのでしょう。
悔やしそうなそれでいてどこかがっかりして寂しそうにしている大人びた横顔がそこにありました。たつる君は何も答えることができませんでした。いつも 「なぜ ? どうして?」 という疑問をすぐママにぶつけてママから答をもらっている自分のことがとても子供じみて感じられたからです。
家に帰ってからたつる君はじゃれついてくる猫のトラにも構わず机の前でずっと考え込んでいました。
「よしなが君はあんなふうに言ったけれど100点を取ったとのだ君はいつも違うことを言っている。
『どうしてみんな先生のお話をちゃんと聞かないのかな。テストの問題も答も全部先生のおっしゃることのなかにあるし 教科書にも書いてあるのに。教えていただいた通りに解いてきちんと家でおさらいすればテストで100点を取ることは決して難しいことじゃないよ。まず易しいところからはじめて土台をしっかりつくらなきゃ。基礎が一番大事だよ」
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