鼈甲と和甲の種類及産地
凡そ龜鼈類の種類は二百廾五種程有りますが、其内加工して價値あるものは玳瑁と正覚坊の二種であります。 玳瑁は即ち 鼈甲と云ひ體長一メートル佗に達する大海龜で、淡黒色で微黄う帯び、茶褐色又は黒色・赤茶色等の大小斑點があり、主甲十三枚、縁甲廿五枚を有して屋根瓦の如く配列し腹甲は黄色を帯びて 龜裂せるもので所謂鼈甲と稱し、美術細工品として珍重されるものは此玳瑁の甲であります。此玳瑁は多く熱帯地方の海岸に棲息するものでありますが、其主なる産地は南洋殊にソロー群嶋・セレべス近海・濠洲・ 新喜坡近海を始めとし、東亜弗利加海岸及西印度諸嶋等でありまして、日本では南洋産の物を南京甲と云ひ、亜弗利加及西印度諸嶋産を異人甲或はシャム甲と稱えて 居ります。是れ等は從來、南洋産は支部商人、亜弗利加及西印度諸嶋産は歐洲人の手を経て輸入された関係上、自然に是等が通稱となつたものと思はれます。正覚坊は一名 海龜と稱し暗緑色に濁黄色又は暗黒色及暗褐色の斑點を有する主甲十三故、鼈甲廿五枚を有し、背甲及腹甲共龜裂して體長は一メー‥トル以上に達する大海龜で、一般に和甲と稱して張甲製品とし用ひらるるものであります。正覚坊の産地としては小笠原嶋及琉球地方で最も優良品を産出し、次で支那領海の海南嶋近海及セレべス・木曜嶋方面等、南洋各地でありますが、小笠原及琉球の産出量は年々減少し現在では特特に激減した様であります。
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